いちcafe日記

一日、いちcafe。大好きな毎日のカフェタイムに思うこと、学び得たこと、実践したことを綴っています。

11月の草花の歳時記:寒蘭展@牧野植物園

11月下旬の3連休、五台山の竹林寺に紅葉を観に行ったついでに、 

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 お隣りの牧野植物園で開催された「寒蘭展」も観に行ってきました。

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寒蘭展なんて、まじまじ観るのは人生で初めてでして。

初めてゆえの面白さが満載でした。

 

まずは、何の知識もなく、寒蘭展に突入。

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するとまぁ、鉢植えの寒蘭がいっぱい。

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そして、おじさまもいっぱい。(笑)

いわゆる、愛好会の方がたですよね。

ブログにはアップできなくて残念ですが、このたくさんのおじさま達の存在にまず驚いた自分に、ウケてしまいました。(笑)

 

アウェイな感覚のまま、ひとまず展示されている数々の寒蘭を見てみますが…。

同じテーブルに配置されているものは、どれも同じに見えます。(笑)

 

「こりゃダメだ」と諦め、別のコーナーに移ると、寒蘭についての解説パネルが展示されていたので、それを一通り読んでみました。

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その内容を、以下にまとめましたので、興味があればぜひ。

 

これを知ると、どれも同じに見えていた数々の寒蘭が、ちゃんと違いが見えるようになってしまう、というマジカルな知識となっています。(笑)

 

(以下の情報の出典は、すべて、牧野植物園の第16回寒蘭展です。)

 

 

寒蘭とは

植物学的には、「カンラン」という植物は、ラン科の植物です。

冬の寒い時期に咲くため、「寒蘭」と呼ばれています。

 

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寒蘭は、花も葉も、線が細いですね。

楚々として咲いている繊細な姿が印象的です。

 

カンランの自生地

カンランの自生地は、日本や東南アジア。

国内での主な自生地は、紀伊半島・四国・九州・沖縄の暖かいエリア。

海外では、中国南部・台湾・韓国の温暖帯〜亜熱帯の地帯に自生しているそう。

 

多くは、海岸近くの低山地の林床に自生しているようです。

自生のカンランは、中高木が程よく整った斜面とか、深くて狭い谷や尾根などシダ類が繁茂しているところで生育するんだそう。

 

カンランがよく育つ環境は、程よい湿度と温度、緩やかな風通し、暗すぎない場所、など、条件が揃っている場所だそう。

 

カンランの生育方法

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カンランのスタートである種子は、果実が割れて粉のような種子が風で飛ばされて、地面に着地し、そこから成長が始まります。

 

ラン科の植物の根の張り方には、2つのタイプがあるそうで:

・地生ラン・・・地面に直接根を張るラン

・着生ラン・・・樹上や岩盤などに根を張るラン

 

カンランは地生ランなので、地面に直接根を張るのですが。

ラン科の植物って、種子自体には発芽のための栄養分がないんですって。

なので、種子が着地した場所に共生できる菌がいたら、栄養を受け取って発芽できるんだそう。

 

その後も、共生菌から栄養を供給してもらいながら、根茎を下へ下へと伸ばして地中に潜り。

やがて、地中深いところで「ラン玉」と呼ばれる根茎の塊へと成長します。

 

「ラン玉」が大きくなったら、今度は、根茎が上へ上へと伸びていき。

地上に葉っぱが生え始め、光合成をしていきます。

ここまでくると、共生菌からの栄養供給から自立して、生育するんですって。

 

地上に葉が出るまでは、根菌依存生長。

地上に葉が出てからは、自立生長。

まるで、親から独立する子供、会社から独立するサラリーマンのような生き方ではありませんか。(笑)

 

カンランの仲間

国内に自生するカンランの近縁種には、以下のような種類のランがあります。

・シュンラン

・ナギラン

・アキザキナギラン

・スルガラン

・ヘツカラン

・ハルカンラン

・ナギノハヒメカンラン

 

どれも何だか和名っぽくて、風流な名称です。(^ ^)

 

寒蘭の鑑賞

お金持ちの観賞用としての寒蘭

寒蘭は、昔から、富裕層や風流な文化人に鑑賞され、愛玩されてきた植物。

何を鑑賞するのかというと、葉の長さや幅、形、艶など、葉すがたを楽しむんですって。

 

寒蘭の鑑賞の歴史

昭和初期から、各産地でカンランの愛蘭会ってのができて。

以降、鑑賞対象は葉だけでなく、花の色とか形、「間」の間隔、全体像なんかを鑑賞する展示会が広がったんですって。

 

その頃の寒蘭は、人気品種になると、投機の対象になるほどものすごい高値で取引されていたそう。

その過熱ぶりに伴って乱獲も進み、今では自生のカンランを見つけることが難しいのだとか…。

 

その結果、人間は人工交配によって新たな名品を求めるようになり。

そこにもお金を掛け、また労力も時間もかけ、各産地の優秀花を選び出して交配し、得られた種子は無菌培養して、最高傑作の観賞用カンランが作出されているのだそう。

 

愛蘭会と命名登録制度

ちなみに、こうして鑑賞価値の高いカンランづくりの活動を高知で行っているのが、土佐愛蘭会、土佐香南愛蘭会、日本寒蘭会なんだそう。

 

例えば土佐愛蘭会は、昭和5年に創立して、今では、1200人の会員がいて、全国に30あまりの支部があるのだそう。

 

で、この土佐愛蘭会は、個体名の統一のために「命名登録制度」という制度を作ったそうで。

制度開始第1号の登録品種は「土佐姫」、現在では約1300品種が登録されているんだそうです。

凄まじい交配数ですね。

 

日本産カンランと中国産カンラン

最近は、中国産のカンランにも注目が集まってて、人気なんですって。

杭州寒蘭とか水晶寒蘭と呼ばれるのが、中国産カンランです。

 

中国産のカンランは、日本産のカンランと比べて色彩のコントラストがはっきりしていたり、花形がすごく整っていたりするそう。

 

寒蘭の鑑賞のポイント は「寒蘭の美しさ=空間美」

寒蘭って、花も葉も茎も、とても線の細い植物なんですけど。

だからこその鑑賞の楽しみ方が「空間美」なんだそうです。

 

ラン科の中でも、洋ランなんかはとても華々しいお花がどーんって咲き誇っていて、存在感と豪華さがすごいんですけど。

寒蘭の場合は、そんな洋ランとは真逆で。

細い葉と花茎と花弁の伸び方や咲き方による直線・曲線が織りなす空間が、寒蘭の美しさなんだそうです。

 

寒蘭の何を観るのか

寒蘭の評価のポイントは、花の形や色、そして葉が重要。

また、花と葉のバランスも重要です。空間美ですから。

 

さらに、ラン特有の「唇弁」も評価のポイントなんですって。

 

ということで、以下にそれぞれの部位の具体的な鑑賞ポイントをご紹介します。

 

寒蘭の花の鑑賞ポイント

寒蘭の評価は、何といっても「花」が品種の優劣を決める第一の要素。

花の形、色、どちらも大切ですが、特に形が重要だそうです。

 

具体的には、花の形は以下の9つに区分されます。

 

寒蘭の9つの花の形

① 一文字咲き(いちもんじざき)

 「ベタ舌」ともいう。  主弁を中心に副弁が左右に水平に開いている

 

② 平肩咲き(へいけんざき)

 肩までは一直線に伸び、先端にかけて少し下がっている

 

③ 三角咲き

 主、副弁の弁先を結ぶ線が三角をなしている

 

④ 落肩咲き(らっけんざき)

 副弁がなで肩になっており、肩を落としたような形になっている

 

⑤ フンバリ咲き

 主弁を中心に副弁が外側に湾曲し、弁端が外側に開くいている

 

⑥ 抱え咲黄

 外弁の三弁が内弁および唇弁を抱えるように咲いている

 

⑦ 反転咲咲き

 外三弁が後方に反転している

 

⑧ 折鶴(おりづる)

 主弁の弁先が折れて、鶴首状になっている

 

⑨ 飛肩咲き(ひけんざき)

 副弁が水平より上がっている

 

まぁーなんてマニアックな区分なんでしょう。(笑)

 

寒蘭の5つの花の色

そして、花の色。

色は、大きく以下の5色に分類されます。

 

① 緑系

さらに細かく、青・青々(せいせい)・刺毛素(しもうそ)・桃腮素(とうしそ)・準白花(じゅんはっか)・素心(そしん)などに分類されるんですって。

 

緑系は、寒蘭愛好家の間では、以前は下級に見られていたらしいんだけど、園芸品として成熟するにつれ評価が上がっていって、今ではかなり人気の色味なんだとか。

 

② 紅系

紅系は、落ち着いた色調の品種が多くて、初心者に人気のある色味だそう。

ただ、発色の度合いが置き場所や管理の仕方に左右されやすいそうで、展示会で差がはっきり出てしまう部門だそう。

 

③ 緑と紅の中間色系「更紗」

更紗という色味は、微妙な色合いなため、「愛好家が最後に行き着く花色」って言われてるんですって。

 

④&⑤ 緑と紅の中間色系「桃」「黄」

桃と黄の発色は、昼夜の温度格差が必要だそう。

なので、南国気候の高知県だと、山間部で育てないとうまく発色しにくいと。

 

寒蘭の唇弁と斑点

ラン科植物特有の鑑賞ポイントが「唇弁」。

「舌(ぜつ)」とか「リップ」とも呼ばれています。

この唇弁の色と形も重要なんですって。

 

唇弁には斑点が10個ほど入るものが多いんですけど、この斑点がほとんどないものもあって、それを「無点」と言うらしいです。

その無点ぐあいは、「全面無点」「完全無点(素舌・そぜつ)」などと、さらに分類されるんですって。

 

また、この斑点が集合体になったものを「ベタ舌」といって、近年人気があるらしいです。

斑点の色や紋様が印象的なものは高く評価されるとか。

 

花だけでも、これだけ細かく分類して鑑賞するんですねー。(^ ^;)

 

寒蘭の葉の鑑賞ポイント

葉は、その「姿」や「柄(がら)」を鑑賞するらしいです。

 

寒蘭の6つの葉の姿

葉の姿は、立ち方や垂れ方の度合いで、以下の6つに区分されています。

 

① 立ち葉 :葉が直立している

② 中立葉(ちゅうだちば) :斜め上方に向かって伸びて、かつ葉先が垂れていない

③ 中垂れ葉(ちゅうたれば) :斜め上方に向かって伸びていて、葉先は垂れている

④ 垂れ葉 :葉先が円弧を描いて垂れている

⑤ 露受葉(つゆうけば) :他の葉姿に交じって、葉先をすくい上げるような形になっている

⑥ チャボ葉 :草丈が15cm前後で、丈に比べて幅が広く、葉が長くならない

 

寒蘭の葉の5つの柄(がら)

続きまして、葉っぱの柄。

こちらは以下の5種類に模様に区分して、鑑賞するそうです。

 

① 覆輪(ふくりん) :葉の外縁に白色また黄色、紺(濃い緑色)の柄が現れている

② 縞(しま) :葉面に縞が入っている(色によって、白縞・黄縞・紺縞とある)

③ 虎斑(とらふ) :葉面の所々に白色または黄色の斑模様が現れている

④ 中透け(なかすけ) :葉の中が白または黄色になり、外縁が緑色の覆輪となっている

⑤ 爪(つめ) :覆輪の葉先だけのもの

 

再び寒蘭の鑑賞にチャレンジ

上記の内容を踏まえて、いざ再び、おじさま達のいるアウェイ感満載の展示会場へ。

そして、全く同じに見えていた寒蘭をまじまじと見直してみました。

 

まずは、高知県知事賞をはじめ、数々の賞を受けられたこちらの寒蘭たち。

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得た知識を元に見てみますと、確かに花の色、形、葉の姿に違いあり。

 

まずは、中央に鎮座しております、最高位の高知県知事賞の寒蘭さま。

紅系の色味で三角咲き。

花付きが詰んでなくて、程よい空間を有する美しさ。

葉っぱは垂れ葉かな?で柄は爪でしょうか。

私としては、何より花の付き方と紅色の色味の奥ゆかしい感じで最高位になったのでは?と分析。

 

続いて向かって左隣りの、高知市長賞の寒蘭さま。

花の色味は、黄色系寄りの白色かな。

気温の日較差で鍛えられた美しさ、ってやつですね。

そして、花の形は…、おぉ?折鶴っぽくないかい?

 

そして、今度は向かって右隣りの、牧野植物園園長賞の寒蘭さま。

こちらは花の色が緑系ですね。

バランスよく色んな種類の寒蘭が受賞されている感じかな。

 

…なぁーんて、最初と比べると、少しは違いを見て取れるようになってきて、鑑賞している感じになってきました。(笑)

 

さらに、これらの寒蘭の両隣りには、あの3つの愛蘭会である、土佐愛蘭会・土佐香南愛蘭会・日本寒蘭会の各会長賞を受賞した、お美しい寒蘭さま方がおりまして。

 

さすがに受賞された寒蘭さま達は、それぞれに異なった美しいお姿をされていて、少し楽しめるようになってきましたが。

それでもこちらの寒蘭たちは、個体差がイマイチ分かりません。(笑) 

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でも、中には葉の柄が縞だったり中透けっぽいものがあったり、花の色が個性的なものもあって。

ボやーっと違いが見えてきた自分を褒めてやりたいと思います。(笑)

 

愛好会のおじさま達は、この一つ一つの違いなんかについて、熱く語っていたのだと思います。

すごい世界ですね。(^ ^;)

 

今回の寒蘭展、初めての鑑賞にしては、楽しめたかな。

 

 

 

ということで、マニアックな寒蘭の鑑賞でした。

 

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